インタビュー

水上淳平さん

水上淳平さん

郡上市出身、在住
岐阜県立森林文化アカデミー 森と木のクリエーター科 木工専攻に在学中
Instagram @jp.mizukami

幼少期から山遊びや釣りが大好きで、製材会社やキャンプ場の運営会社での勤務経験もある水上さん。人の生活が森と離れていっていると感じ、「モノづくりをとおして自然の大切さや魅力を伝えられる木工家になりたい」と、岐阜県立森林文化アカデミー(以下、「アカデミー」)で学ばれています。既にアカデミーで学んでいながら、さらに飛騨市広葉樹のまちづくり学校(以下、「学校」)でも学びたいと考えた理由、学んでみての変化などについてお伺いしました。


目次

  • 独立後を見据えて、身近な木である「広葉樹の小径木」についてもっと知りたかった
  • 木は生き物だという実感、木材利用だけではない文化や森林空間の重要性を再認識
  • 卒業後の具体的な計画がより明確に
  • お話を聞いて – 大切にしていた価値観をより深め、飛騨市の人たちとの協働を具体的にイメージできる機会

独立後を見据えて、身近な木である「広葉樹の小径木」についてもっと知りたかった

早速ですが、受講前の期待や不安について教えてください。

もともと身近な木を使って木工をしたいと思っていました。普段の実習で小径木(直径の小さい木)を扱う機会はあまり多くありません。独立後に使いたい、身近な木である小径木についてもっと知りたいと思い、受講を希望しました。

私の住んでいる郡上市も木はたくさん生えているんですが、どちらかというと建築用材向きの木が多くて。地元の木といっても郡上ではなく高山や飛騨から仕入れるのかなと気付いてきていたタイミングでもあったので、飛騨で広葉樹に関わっている方と交流を持てたらいいなとも思っていました。

卒業後のプランを見据えて具体的な目的をもって参加を決められたんですね。不安はありませんでしたか?

木工を学び始めたばかりだったのでついていけるか不安でしたが、受講前に問題ないと言って頂いて安心して受講出来ました。学生の段階で、森から製材、川上から川下までいろいろ勉強できて、木工家になる人間としてはいい経験になりました。

木は生き物だという実感、木材利用だけではない文化や森林空間の重要性を再認識

特に印象に残った講義について教えてください。

横井先生※1の「価値の高い広葉樹の森づくり(第2回)」と野村所長※2の「広葉樹林と地域の暮らし・産業(第5回)」です。

木工を学んでいると、特に「木材=素材」として見る視点が多くなるけれど、横井先生の講義で実際に森に行って、木の育て方や「人ができることは限られていて、将来どんな森にしたいかを考えて手助けしていくことが林業」みたいな話を聞いて「木は生き物」だと実感が生まれました。通常の木工では切り捨てられてしまう虫食いや腐りの部分も生きていた証だと感じるようになり、これからの自分の木工に生かしたいと考えています。

野村所長の講義では、木材利用以外の別の視点ー文化や森林空間ーへの想いを強くしました。飛騨の薬草文化については今まで知らなかったので、今後も飛騨に足を運んで話を聞いてみたいと思っています。

もともと木材利用以外の森林資源の活用として、きのこにご興味があったと聞いています。

そうですね、きのこ狩りおもしろいですよ。きっかけはたまたま美味しそうなきのこを見つけたことだったんです。でも図鑑で調べてみても、それがなんのきのこか全くわからない。勉強して少しずつ知識をつけていって、分かるようになるのがまず楽しい。きのこを探しに森に入れば気分転換になるし、見つけて嬉しいし、食べて美味しい。ゲーム感覚で楽しみながら自然の豊かさを実感するいい機会になると思います。

飛騨市はきのこ文化の強いエリアなので、ご自身で天然きのこを採って食べている方も多いと思います。そういった方たちに学んで、僕も人に教えられるようになりたいな、とも思っています。

※1 岐阜県立森林文化アカデミー 教授 横井秀一氏
※2 飛騨市役所河合振興事務所 所長 野村久徳氏

卒業後の具体的な計画がより明確に

受講しての変化やこれからのアクションについて教えてください。

卒業してからどこの木を買ってどの人と協力していけたら面白そうだと、何となく想像できるようになりました。あと、半年間通って飛騨の皆さんにとても良くして頂いて。これから自分の仕事をつうじて、飛騨のためになるよう協力していきたいと思う感情が芽生えたのが一番の変化かもしれません。

飛騨市森林組合さんに、根本材の利用についての調査の協力の依頼をさせていただきたいと思っています。

第6回の講義で根本材を使ったテーブルをご披露頂きました。

アカデミーの先生づてに森林組合の方から根本材を分けてもらったので、森からいただいたもので、森の中で使いたくなるような道具を作ってはどうかと思い「持ち運びテーブル」を作りました。あまり利用されない根本材ですが、加工してみたらすごく美しい木目の板がとれて。短い材を組み合わせて長く使う工夫をした結果、コンパクトにもなりました。

水上さんの作品

木材利用、森林空間利用、森林資源利用の3つはセットで考えていきたいんです。具体的なアクションとしては、自分の本業である木工(木材利用)をメインに、きのこに詳しい飛騨市の方などに学びながら、きのこ狩り(森林資源と森林空間の利用)などをとおして一般の方に自然の大切さや魅力を伝えていきたいと思っています。

お話を聞いて – 大切にしていた価値観をより深め、飛騨市の人たちとの協働を具体的にイメージできる機会

「モノづくりをとおして自然の大切さや魅力を伝えられる木工家になりたい」と、アカデミーでも学び、いろいろな活動をされている水上さん。伝えるためのツールとして木工を選んではいるけれど、木材に限らない森林資源や森林空間の活用も重要だと考えていらっしゃいました。

今回の学校では、毎回の講義で「飛騨市の広葉樹のまちづくりの取り組みやそれに関わる川上から川下までの仕事」をお伝えしてきました。講義をつうじて知識を得るだけでなく、ご自身の大切にしていた価値観をより深め、これからの具体的なアクションに繋がる人との出会いがあったとお話しいただき、運営事務局一同大変嬉しく思います。

学校受講中に、実際に根本材を使って持ち運びテーブルの試作品を完成させ、ご披露頂いた行動力抜群の水上さん。日々の活動はInstagramでも発信されています。水上さんの飾らない人柄と、大切にされている価値観が伝わってくる投稿ばかり。これからのますますのご活躍が楽しみです。

※オンライン取材につき、写真はご提供いただいたものを使用しています。

聞き手・文:飛騨市・広葉樹のまちづくり学校運営事務局/株式会社トビムシ 永田麻未