第3回 令和2年11月19日~20日
広葉樹は伐採後すぐに使い手の元に届くわけではなく、伐採、搬出、造材、運搬、製材、乾燥、加工など様々な過程を経て流通している。ここでは、広葉樹原木の様々な流通について理解し、また広葉樹原木の価値を高める上で重要な位置づけがされる「製材」と「乾燥」の具体的手法について理解する。
飛騨市・広葉樹のまちづくり学校が開校して早いもので3回目になります。全6回の講義も折り返しです。
これまで同様お忙しい中集まっていただき、毎回活気のある学校が開けていることを感謝しております。参加者の皆さんの溢れる熱意を感じ、改めて残り3回のプログラムをこれまで以上に有意義な時間となるようにしていきたいと思います。
今回、第3回の様子も学校運営事務局である株式会社トビムシの森脇がレポートとしてまとめたいと思います。
今回、第3回のテーマは『広葉樹原木の流通と製材乾燥』。
広葉樹は伐採後すぐに使い手の元に届くわけではなく、伐採、搬出、造材、運搬、製材、乾燥、加工など様々な過程を経て流通しています。ここでは、広葉樹原木の様々な流通について理解し、また広葉樹原木の価値を高める上で重要な位置付けがされる「製材」と「乾燥」の具体的手法について理解することを目的としています。
参加者の皆さんからも「大径木も小径木も伐採後どのような道をたどるのか、数字でしか知らなかった部分の現場を実際に見てみたかった。」「林業の大きな問題点として流通の問題があると認識していたので、それのより詳細な問題点の把握・解決法・アイデア・気付き等、何か得られればと考えていました。」といった講義に対する期待が伺えました。
それでは、1日目からレポートしていきます。
2020/11/19(1日目)
岐阜県森連飛騨共販所では材の流通状況や市場の現状、歴史などについてご説明頂きました。
山から運ばれてきた木材は用材とチップ材に区別され入ってきます。用材などになる良い材だけが市場に入ってくるような状況にはなっていません。
現在、共販所では取り扱い材のうち97%が針葉樹、3%が広葉樹です。飛騨地域に木工会社が多いことを考えると広葉樹の取扱量は少ない状況にあります。競りは月2回行われており、競りに出された広葉樹はほぼ売れています。
広葉樹の主な用途はチップであり、その他に窓枠、床材の一部として利用されることもあります。
広葉樹の生産量は少ないですが、安定して供給されているようです。
最近は買い手にも変化が現れているようで、規格品を求めない傾向にあります。曲がり材の需要もコンスタントにあるため、競りにも出しているようです。
逆に規格品のロット数が少ないので、集材できないという問題も同時に生み出しています。
岩木さんからはこれからの広葉樹流通について、これまでの市場形成史を交えながらご意見もお聞きすることができました。
「製材所は水力を動力源にしていたため、川沿いにありました。初期は山から直接、製材所に材が持って来られていました。その結果、余剰在庫が生まれていました。そこに三輪車が生まれ、遠方にも材を運ぶことができる様になりました。山側の供給が足りなくなり、解消するために市場ができました。さらにトラックが使われる様になり、大型化した製材所に再び山から直接、材が送られるようになりました。大型化された製材所では効率化を図るために製品が規格化され、通直の部分しか使わなくなりました。
今は広葉樹の流通が少ないため特に問題にはなっていませんが、これから流通量を増やしていこうとする際、在庫がだぶつき始めるはず。それを解消するためにはこれまでの針葉樹の流通構造と同じように規格化していく必要がでてくるのではないでしょうか。」
広葉樹流通の正解はまだ分かりません。ただ、これまでの針葉樹を主とする市場形成の歴史を振り返ることで、これからの広葉樹流通を考えるということは重要な事のように感じました。
株式会社カネモクは鉄道の枕木製材工場として創業されました。
現在では、原木仕入から製材・天然乾燥・人工乾燥・木取りまでを行なっていらっしゃいますが、今回は特に乾燥と製材について詳しくご説明頂きました。お話の中から特に印象に残った乾燥について抜粋してレポートします。
常時、40立米の大きさの乾燥機が4台稼働しています。大体18日ぐらいで乾燥させ、8%±2%の含水率になるまで木材を乾かします。
その乾燥方法はなんと20パターンもあり、それぞれ日数、温度、湿度、風量の組み合わせによって生み出されています。当然、樹種によっても乾燥のスピードが異なるため、そのスケージュルに合わせて乾燥機に入れていきます。これだけのパターンを作り出すために30〜40年のデータの蓄積を地道に行なってこられたようです。
このような日頃の研究や実験的な試みへの挑戦が、木工所などからの信頼と様々な依頼に繋がっています。今回のまちづくり学校に参加されている木工作家の方も、一般的には行わない原木のままの乾燥を依頼されたそう。「カネモクさんには依頼を快く引き受けていただいている。カネモクさんがいなければ今の木工所も成り立っていなかったと思う。」といったカネモクに対する厚い信頼と感謝の言葉を述べられました。
その他にも反った板を伸ばしてくれといった依頼や、小径木は乾燥によって暴れるやすいため、重石をのせたりして動きを止めながら乾燥を行なうなどあらゆる要望に対して策を講じながら挑戦されています。
広葉樹の森からは多様な材が出てきますが、それらを全て一緒に扱えないのが流通における課題の一つです。それをこれまでの経験と挑戦、何十年も蓄積されたデータを元に、混ぜて乾燥を実現している。そういったところがあるからこそ、多様な広葉樹を最大限活かすことが可能になるのだと思います。