講義レポート

紅葉した広葉樹の森

第2回 令和2年10月22日~23日

価値の高い広葉樹の森づくり

飛騨市広葉樹のまちづくりを支える柱の一つ「豊かな森づくり」。ここでは、多様な価値を有する森林とは何か、また、そうした森林をどのように作っていくかについて理解する。

講義内容
育成木施業の伐採現場の見学と実践の解説
広葉樹の森の観察と広葉樹の特性
価値の高い森づくりのワークショップ
価値の高い広葉樹の森づくりについて
広葉樹伐採予定現場の見学と解説
講師
岐阜県立森林文化アカデミー 教授 横井秀一氏
飛騨市森林組合

秋も深まり、飛騨市は朝晩が冷え込んできました。
標高の高い奥山では葉が色づき始めています。

そんな中、開催された第2回目の飛騨市・広葉樹のまちづくり学校。今回は広葉樹林施業の現場での講義が多くありました。残念ながら悪天候続きで肌寒い状況でしたが、皆さん意欲的に講師陣に質問するなど活気のある講義になりました。
そんな第2回の様子を学校運営事務局である株式会社トビムシの森脇がレポートとしてまとめたいと思います。

今回、第2回のテーマは『価値の高い広葉樹の森づくり』。
飛騨市広葉樹のまちづくりを支える柱の一つである「豊かな森づくり」。多様な価値を有する森林とは何か、またそうした森林をどのようにつくっていくかについて理解することを目的として講義が行われました。
参加者からも「机上と現場の違いを知りたかった。 今から施業する上での、作業方法と実際の作業での可能と不可能の差を知りたかった。」「従来、広葉樹はたまたま出てきて売れた材という扱いだったので、山主にとっての価値をどのように提供できるかよくわかりませんでした。林業としてどのように取り扱うべきか議論できないなんとなくそのままの扱いを、今回の講義で視点を少し変えることができるかもしれないと考えていました。」といった講義に対する期待が伺えました。

それでは、1日目からレポートしていきます。

2020/10/22(1日目)

過去の施業地の経緯と評価 @池ヶ原モデル林

講師
岐阜県立森林文化アカデミー 教授 横井秀一氏
飛騨市森林組合林産課 課⻑ 新田克之氏

横井先生

初めに岐阜県立森林文化アカデミーの横井先生からこの講義の意義についてご説明いただきました。
「広葉樹林施業の際には森林の状況を見て、出来ること出来ないことを判断し、供給の仕方のデザイン、育て方を考えていかなければならない。科学的には広葉樹林施業の方法はあるが、現場でやれることとのギャップはある。そこを皆さんと考えたい。」
今回の授業の現場となる池ヶ原モデル林の発注者である飛騨市役所の竹田さんは
「広葉樹林施業が行われている他の地域では皆伐が多い。将来に向けて広葉樹を育てる育成木施業をやっていきたかった。」
と語られました。

飛騨市役所の竹田さん

また受注者である飛騨市森林組合の新田さんからはこれまでの経緯をご説明いただきました。
「施業手順は道をつけ、全木調査を行った上で育成木を選び、ライバル木の伐採を行った。しかし、現場の土質等の問題で、重機がのぼれない、キャタピラが埋まる、土砂が流れてくるなど苦労が絶えない現場だった。」
と当時の作業の大変さを窺い知ることができました。

新田さん

次に、施業現場に移動し、広葉樹林を見ながら横井先生から育成木施業方法をご説明いただきました。
「葉の量が多いと枝が増え、幹が太るが使える幹の部分(枝や節が無い通直な部分)が短くなる。一方、枝がないと使える幹の部分が長くなるが幹は細くなる。使いたい材をイメージしながら育て方を考えていく必要があります。
こうしたイメージ通りの森林にしていくためには間伐のタイミングが重要になってきます。
そのためにも、若い林の段階で早めにイメージを固めた方がいい。ある一定の期間以上育ってしまっていたら、皆伐するのかあるいは良い材だけ切り出すのかなどの選択を行い、次の施業につなげていく必要があります。」

森での講義の様子

その後、それぞれの樹種の特性についての話題になり、ホオノキ、ブナなど樹皮が平滑なものは樹皮が焼けやすいこと、また、ウダイカンバなどのカバノキ属は休眠芽が全部開いているため、生長の途中で近くの木の間伐などによって光が当たるようになっても後生枝が出にくい、といった専門的でありながら大変興味深いお話しを聞くことができました。参加者からも「この木はなんですか」、「どういった特性があるのですか」といった質問が投げかけられ、皆さん興味津々の様子でした。
広葉樹林の施業のためには、このように様々な専門的な知識を身に付ける必要があります。しかし単純に知識を詰め込むだけではなく、今回のように皆で楽しく学ぶことができるのだということを実感することができました。
また、横井先生からは家具を作られている方へ、「年輪幅をどれぐらい意識するのか?」といった問いかけがあるなど、山側の考えと使い手側の考えをすり合わせる光景も見られました。

質問に答える横井先生

その後、少し場所を移動し、昨年度に整備を行った広葉樹林の現場を見学しました。

昨年度に整備を行った広葉樹林

この現場は整備を実施してから1年ぐらい経っています。
広葉樹林整備でどう採算を合わせていくか、伐り過ぎた箇所でしっかりと更新が図られるかなど、今後継続的に評価していく必要があり、3年ぐらいたつとよくわかるようです。伐採されて木が無くなると山にとって悪影響があるようにも思えますが、伐採することで生態系がある程度リセットされ、芽から成長する樹種も活かしていけるなど、森林の多様性が高まる側面もあります。このような取り組みを試行錯誤しながら繰り返し行っていくことが今後の広葉樹林施業の知見とノウハウの蓄積となっていきます。
飛騨市役所の竹田さんからは今後も、木が立ってる時に木工作家さん等使い手に見てもらい、そこで施業方法などを議論できる場を設けていく等、展望についてもお話を伺いました。

森での説明の様子

参加者からのコメント

  • 森を育てるためには、樹木を知り材の用途を考えることが必要だと分かりました。
  • 今回の一連の講習で一番楽しみにしていました。他の方と違ってもの作りには疎いですが、生態学と林業をあわせて森を管理していくやり方は、自分の関われそうな領域だと感じました。樹形と生長の関係を現地で確認できて良かったです。
  • 横井先生の専門性と知識量に圧倒されました。
  • 実際に立木を見てのお話しはイメージがわきやすく、今までぼやっと理解していたことがいろいろとクリアになりました。
  • 現場での課題等も理解できました。 材を利用する立場として、どの様な商品を製作していけばよいのか参考になりました。
2日目のレポートはこちら

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