第4回 令和2年12月21日~22日
針葉樹と比較して樹種が多様な広葉樹は用途もまた多様である。ここでは、広葉樹の主要な用途である建築と家具の使われ方と市場について理解する。
飛騨市・広葉樹のまちづくり学校も年内最後の講義となりました。
飛騨市内は一面雪景色に変わり、冬の時期ならではの美しい風景が見られました。
参加者の皆さんにも足元の悪い中集まって頂き、今回も活気のある学校を開催することができました。
第4回の様子も学校運営事務局である株式会社トビムシの森脇がレポートとしてまとめたいと思います。
今回、第4回のテーマは『広葉樹の建築と家具への利用』。
針葉樹と比較して樹種が多様な広葉樹は用途もまた多様です。ここでは、広葉樹の主要な用途である建築と家具への使われ方と市場について理解することを目的としました。
参加者の皆さんからも「木工に関わる者として、どんな作り手がどんな風に作っているかに興味がありました。」「建材利用での広葉樹の可能性、針葉樹材との比較。大手メーカーさんが今後どのように国産広葉樹を利用していくか気になりました。」「家具・建築における材料としての広葉樹はどういう位置づけで、生産・販売上どういう課題があり、どういう利点があるのか知りたかった。」といったコメントが寄せられ、講義に対する期待が伺えました。
それでは、1日目からレポートしていきます。
2020/12/21(1日目)
岐阜県立森林文化アカデミーの講師である渡辺先生には今回、木工房・木工作家の国産広葉樹利用の現状を知るためにアンケートを取っていただいたり、自らも作り手の一人として実際に飛騨産のナラとロシア産のナラを使用したチェストを製作していただくといった、講義を盛り上げるための様々な準備をしていただきました。参加者の皆さんも木工作家の方の生のコメントや実際の家具が目の前にあることで各々考え、感じることがあったようで活発な議論がなされました。
「国産広葉樹利用についてのアンケート」では渡辺先生と繋がりがある全国の木工作家107名からアンケートを取り、集計しました。年齢や所在地、従業員数などの基本的な情報から、使用されている樹種や国産広葉樹を使う理由など網羅的にアンケートを取っていただきました。
私が特に印象に残ったのは、木工作家の方々は国産材を使いたいが、思うように調達ができていないという点です。木工作家の方々は、国産材・地域材にこだわりたい、環境に配慮したい、産地・生産者がはっきりしているものがいい、といった理由で国産材を求めています。一方で手に入りにくい、国産広葉樹についての情報がないといった理由で国産材を諦めている方もいるようです。
渡辺先生からも「国産広葉樹を肯定的に利用する方が思ったより多く驚いた。その反面、情報の少なさを指摘する回答が多く、川上から川下までをつなぐ情報共有、売り手と買い手のマッチングなどのシステム構築を望む声が多くみられた。」とアンケート結果からの考察を述べられました。
飛騨産とロシア産のナラを使ったチェスト製作では材料費、製作時間などを比較しながら製作時に感じたことを事細かに教えていただきました。
ロシア産のナラに比べると、飛騨産のナラは材料費を安く抑えることができましたが、製作時間が6時間ほど多くかかってしまったとのことです。
その理由の一つには木取りから矧ぎまで時間がかかっていることがあります。ロシア産のナラは材が矩形に成形されていますが、飛騨産のナラは曲がりや割れが多いため木取りに時間を要しました。また、曲がっているので購入する際にどれぐらいの材が必要なのかも予測しづらかったようです。
渡辺先生は製作してみた感想として、「曲りや割れなど製作する上での障害になったり、小径木が多く、はぎ合わせの枚数が多くなったため歩留まりが悪くなり、端材も多く出るといったデメリットがあった。ただメリットも多くあり、また欠点と思われる部分をうまく活かしたり、製作の際に色々な工夫をする必要があって、作っていて楽しいと感じる瞬間は多かった。」とおっしゃっていました。
田中建築の代表である田中さんからは、建築での広葉樹利用についてお話をしていただきました。
田中建築では原木の調達から製材、乾燥までを自社で行っており、木材にこだわりを持った家づくりをされています。
現在、田中建築では広葉樹を20種類ほど使っており、特にケヤキを使われることが多いようです。田中さんによると、最近は白色の材の人気がなくなってきており、味のある濃い色の材を求める施主が増えてきているそうです。
広葉樹は造作材として使用するだけではなく、構造材としても使うことも多いようですが割れが出やすいため、見えない場所にドリルで穴をあけるなどの工夫をされています。
外材も使いますが、自分が思ってもいない所に変な割れが入ることがあるらしく、あまり目立つ場所には使わないそうです。
田中建築が建てる家の施主さんは20~30代の若い世代が多く、予算的に厳しい条件の中で作らなければならない事も多いようです。ただ田中さんは自社の利益より、木の家の魅力を知ってもらい、多くの人に木の家を建ててもらいたいという思いから、価格を抑える様々な工夫をされています。
例えば、材が安い時に買ってストックしておくことや、自社で乾燥などを行う、予算に合わせて針葉樹を使う箇所を増やすなど施主の方の希望に沿った形で実現できるような調整をされています。
また木の家はメンテナスが必須となってくるため、不具合があった時にすぐに修理に行けるように主に飛騨地域で建築することが多く、また基本的には無料でメンテナスを行っていらっしゃいます。
このような広葉樹を使った木の家の良さを知ってもらいたいという熱い思いと、建てた家の面倒は見続けるという責任感が田中建築の大きな魅力につながっていると感じました。